小さな幸せを大切に、ぼちぼち農園

 

人との出会いに影響され、知らず知らずのうちに農業の道を目指していた健太郎さん。
そして農業を、どこか身近に感じていながらもまさか自分が携わることになるとは思っていなかったという涼子さん。

そんな二人が出会い、結婚。

初めは奈良県の御所市で健太郎さんが中心に農業にかかわり、
涼子さんは外に働きに出ながらその休日などに農業にかかわるというスタイルを取っていました。
そして縁に導かれるようにしてより、広い農園である今の丹波市春日町山田の土地にて夫婦と、
マスコット美人猫シポコさんとで新たな農業ライフを始めました。

それが「ぼちぼち農園」です。

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ぼちぼち農園で栽培される野菜は農薬、化学肥料を一切使わずに、
ごま油の搾りかすだけを肥料として使用しながら育てられています。

ぼちぼち農園のポリシーの一つは「できることは体を使ってする」こと。

畝づくり、耕し、虫取りなども健太郎さん、涼子さんのお二人が
できるだけ機械を使わずにスコップと鍬の手作業で行っています。
農業の世界でも機械化は進み、より効率的に、より沢山、より見た目の良いものをと求められてきています。

その中で手作業で行う農作業は「めっちゃ時間かかりますよ」とほほ笑む涼子さん。
その隣で健太郎さんが「手でやるのが面白いんですよね。『やってる感』もあるし、
ゆっくりやっているからこそ農園にいる虫や蛙なんかが目につくんですよ」と穏やかに話します。

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時にはさまざまな心の状態が種のまき方に表れたりする、それも面白さの一つです。

「自分らが楽しいと感じることをしていきたいです。薬を使って草を取るよりも、手で草を抜くほうが楽しいんです」

そんな健太郎さん、涼子さんの思いで楽しんで作られた野菜は定期便や単発注文などで方々に出荷しています。
普段野菜を好まないお子様や旦那様がぼちぼち農園の野菜なら食べたなど、
多くの人から喜びの声が寄せられるのがお二人の大きな幸せになっています。

また、「ぼち農会」と呼ばれる農業体験会やワークショップの会にて、
作っている場に触れる機会をぼちぼち農園では設けています。

それは農業の面白さ、楽しさを伝えるというのと同時に、作る過程を見てもらうことで「嘘のない」作物づくりをしていくという目的もあります。それは農業だけでなく、生活全般における健太郎さん、涼子さんの姿勢にも表れています。

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出していただいた紅茶、その紅茶に合わせていただいたミルクジャム、
それを飲むための器など、それは全て健太郎さん、涼子さんのアンテナに反応したものばかり。

それらの共通点が「きっちり作っている、作っている人の顔が見える」ことだといいます。

直接買える場所があれば出向いてその人と関係を築き、信頼のできる人から購入するというスタンス。
時にはマルシェなどの出店者同士物々交換をしたりすることもあるそうです。
一つ一つのものにこだわりとストーリーがあり、それなのに押しつけがましくない、
不思議に柔らかいお二人の人柄が随所に表れ、いつの間にか虜になってしまいます。

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「丹波に来て心の余裕ができ、また村のネットワークに入って行事に参加したり人との付き合いが密になりました。
村の人たちが目をかけてくれているのを感じます」

丹波に来て改めて農業の楽しさを味わう健太郎さん。
そのそばで涼子さんはライフスタイルの転換を迎えていました。

「丹波に来るのをきっかけに農業に専念しました。そして都会にいた時は意識してみていた化粧品や服などに対する物欲というものがなくなりましたね。その代わりに、誰かがうちに来てくれること、その人たちとの付き合いを大切に思うようになりました」

飾らない自然な姿で、ゆったりと力の抜けた涼子さんの語り口は「心のコリ」を全く感じさせません。

そんな涼子さんが今ひそかに楽しんでいるのが「段ボール探し」。

発送用の段ボールで、素敵なデザインのものや適した大きさ、
丈夫さのものを見つけた時には「めっちゃテンションあがります」。
日常の中で小さな幸せを大切にしながら「農園があって猫のシポコがいたらそれでいい。ぼちぼちでええよな」と
優しく語る涼子さんの言葉に、隣でにっこりとうなずく健太郎さんがいるのでした。

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interview / writing : asako saiki

| Information |
潮屋 健太郎・涼子|ぼちぼち農園
http://bochinou.com/
電話番号/ 0795-78-9338
兵庫県丹波市春日町95-1
定休日/ お問い合わせください
駐車場/ 10台